現在の勤務先は将来性がある職場なのか、不安がよぎったことはありませんか?
変化の激しい時代になったことに加え、現役時代が長期化しつつあることで、長く1社に勤めることもリスクとなりつつあります。
今の勤務先にこのまま勤め続けるべきか、転職して環境を変えるべきか、迷った際にはどのような点をチェックするべきでしょうか。
今回は、勤務先の将来性が不安になったときにチェックしておきたい項目を紹介します。
ぜひ今後のキャリア選択の参考にしてください。
勤務先の将来性に不安を感じるタイミングとは?
会社員にとって、自社の将来性が不安になる瞬間にはいくつかのパターンがあります。
典型的な例として、将来性が不安になる3つのタイミングを挙げてみました。
業績が悪化しているとき
自社の業績が悪化しつつあると、社員は不安を覚えます。
業績が悪化し続けた場合、ボーナスカットやリストラが実施されるかもしれないからです。
数年にわたって業績が顕著に右肩下がりになっているようだと、何か対策を講じなければ事業の存続が危うくなってしまいます。
社内に不穏な空気が漂い始めたり、経費削減に注力し始めたりすると、「うちの会社は危ないのだろうか?」と誰しも思うでしょう。
業績が悪化しているにも関わらず、回復させるための具体的な手立てがないように感じると、不安はいっそう増していきます。
営利企業である以上、業績悪化を不安に感じるのは自然な心境です。
業界全体が衰退していると感じるとき
自社だけでなく、競合他社も含めて業界全体が衰退傾向にあると感じると、自社の先行きにも不安を覚えがちです。
業界内で倒産の噂を耳にしたり、ライバル社の業績悪化を知ったりすると、「うちは大丈夫だろうか?」と感じるでしょう。
衰退産業に特徴的な傾向として、身内を守ろうとする意識が強まることが挙げられます。
顧客や消費者のことよりも、自分たちの利権を守るための判断を優先するようになるからです。
たとえば、顧客利益を鑑みれば当然着手しておくべき効率化や業務改善に対して消極的な意見が目立つようになります。
新たな試みをしてリスクを冒すよりも、現状維持に徹したほうが安全と考えるようになっていくのです。
長い目で見れば顧客離れに拍車がかかり、自分たちの首を絞めるようになることは容易に想像できます。
それでも目の前の利益確保に執着してしまうのは、業界全体が弱体化していることの表れでしょう。
優秀な社員が退職すると知ったとき
将来性のない企業では、優秀な社員ほど早期に見切りをつけて転職していきます。
優秀な人材は物事を総合的に捉えているため、自社の行く末に関しても先を読んで予測を立てているのです。
しかし、エース社員が退職すると知れば同僚は少なからず驚き、動揺するでしょう。
「うちの会社はそんなに魅力がなくなっているのだろうか?」と不安がよぎるはずです。
とくに役職者などのキーパーソンが退職する場合は不安もいっそう大きくなります。
管理職であれば業績の実情や今後の事業方針についても熟知しているはず。
勤務先にとって明らかに重要な人物が退職するようなら、多くの社員が自社の将来性に不安を抱くのは自然なことです。
勤務先の将来性が不安になったらチェックするべき5項目
では、勤務先の将来性が不安になった場合、どのような点をチェックしておくべきなのでしょうか。
ここでは、非管理職の社員を想定し、自社に将来性があるかどうかを判断するポイントを紹介します。
勤務先の現状がどうであるか、1つ1つチェックしてみてください。
経営層の事業ビジョンは明確か
現状の業績が良い・悪いに関わらず、経営層が明確な事業ビジョンを掲げているか振り返ってみましょう。
事業方針やビジョンを語る際に「笑顔を大切に」「お客様のために全力を尽くす」といった抽象的な言葉を使っていないでしょうか?
実際には事業ビジョンが不明確で、大局的には現状維持に留まっている場合にこうした傾向が表れやすくなります。
このような状況にある企業は、現状では業績に大きな問題がなかったとしても近い将来業績が傾く可能性が高いでしょう。
なぜなら、事業計画は年単位で立てられることも多いため、現状が無策であれば今後も事業が育つ見込みは薄いからです。
まして業績が悪化しているにも関わらず、経営層が明確な再建ビジョンを示せないようなら危機的な状態にあると考えてください。
事業計画を策定し、実行に移すよう指揮していくのが経営層の役割です。
明確な経営ビジョンを示せないようでは、その企業の経営陣はすでに機能不全に陥っていると考えざるを得ません。
新規事業の開発に積極的か
既存の事業を維持するだけでなく、新たな事業をつくるための議論が活発に交わされているでしょうか?
また、有望な新規事業を育てるためなら資金の投下は惜しまないという姿勢が経営陣に感じられるでしょうか?
もしこうした積極的な姿勢が見られないようなら、その企業は「守り」に入っていると考えられます。
新規事業の開発は、常に失敗と隣り合わせです。
失敗すれば資金を溶かしてしまう恐れもありますが、既存の事業を守っていくだけでは事業が縮小していくことは目に見えています。
なぜなら、国全体の人口は減少傾向に転じており、多くの業界で国内市場が縮小していくことは分かっているからです。
新商品の開発や海外展開といった新たな事業の見通しを持っていないようでは、じわじわと沈んでいく運命にあるといえます。
新規事業の開発に消極的な企業は、業績が下がることこそあれど、大きく伸びる見込みは薄いといわざるを得ないのです。
役員人事は適切か
勤務先の社員数に対して、役員の人数が多すぎないでしょうか?
また、業績不振に陥っている部門の担当役員がいつまでも役員の座に収まっているなど、人材の流動性が低い傾向は見られませんか?
役員人事には、その企業の経営姿勢が色濃く表れることがあります。
役員が長年固定化されていて顔ぶれがほとんど変わらないようでは、取締役会での議論も陳腐化してしまうでしょう。
企業によっては家族経営であったり、グループ子会社だったりと、役員は固定されているのが前提というケースもあり得ます。
その場合はなおさら、役員が率先して事業を育てていこうとしているかを見極めることが重要です。
現状維持に終始しようという姿勢が見られるようなら、変化の激しい時代においては淘汰されていくリスクが高いと推測できます。
管理職が現場の実態を把握しているか
勤務先の管理職が現場の実態を把握しているかどうかもよく観察してみてください。
係長や課長といった現場に近い役職者だけでなく、次長や部長クラスの動きも注意深く見ていくことが大切です。
管理職が現場を把握していない職場では、しばしば次のようなことが起こります。
- 現場の社員は「部長は細かいことは知らない」「管理職は実務が分からない」のが当たり前だと思っている
- 部長級の役職者が決裁しかしておらず、現場の社員は決裁を得るための根回しに奔走している
- 管理職が話していることを現場の社員が理解できない・会話が噛み合わない
- ごくまれに管理職が現場を見に来ると、たいてい的外れな指示や助言をする
- 上級役職者や役員と現場のやり取りを仲介する伝書鳩のような役割の中間管理職が複数いる
上記のような管理職が社内にいるようなら、企業規模に関わらずその組織は大企業病に罹っている可能性が極めて高いでしょう。
本来、管理職は現場の社員を統率するリーダーであり、現場を把握していないようでは何も仕事をしていないのも同然です。
管理職が現場の実態を把握していない様子が見られるようなら、勤務先は危険な状態にあると捉えてよいでしょう。
精神論がまかり通っていないか
社内で精神論が声高に叫ばれるような企業も、組織として危機的な局面に差し掛かっている可能性があります。
精神論がまかり通っているかどうかは、実務を担当している社員に「精神的な負荷」をどれだけかけているかが目安となります。
一例として、営業部であれば営業成績が芳しくない社員はどのような立場になっているでしょうか?
営業担当者が参加する会議で成績不審者を吊し上げたり、叱責して精神的に追い詰めたりしているようなら注意が必要です。
管理職や役員が精神論に走るのは、具体的なノウハウがないことが主な原因と考えられます。
営業成績が奮わない担当者がいるなら、本人へのヒアリングを元に原因を突き止め、改善策を示せば済むことです。
しかし、吊し上げたり叱責したりといった手段でしか部下を指導できないのは、ノウハウが欠如していることの表れといえます。
勤務先で精神論がまかり通っている兆候が見られるようなら、残念ながら自社の先行きは明るくないと予測したほうがよいでしょう。
勤務先の将来性が不安になった場合の対処法
ここまでに挙げた「将来性が心配な会社の特徴」に勤務先が該当していた場合、どのように対処するのが良いのでしょうか?
重要なポイントは、不安に感じたからといって即退職・転職といった判断を慌ててしないことです。
環境を変えるなら、現状の不安な点をきちんと解消できる環境に移りたいですよね。
そこで、次の手順を1つ1つ着実にこなしていくことをおすすめします。
現在の担当業務で挙げられる実績は挙げておく
転職するタイミングによらず、現在担当している業務で挙げられる成果は最大限に挙げておきましょう。
直近で何らかの実績があれば選考時のアピール材料になるだけでなく、円満退職にも有利に働くからです。
ときどき勤務先を辞めると決意した途端に気が緩んで仕事の手を抜く人がいますが、これはあまりおすすめしません。
手を抜いた結果、ミスやトラブルが発生すれば対応のための労力がかかります。
後述する通り転職活動を並行して進めておきたいので、できるだけミスやトラブルを回避して時間を確保したいところ。
むしろこれまで以上に担当業務に注力し、現状挙げられる成果は精一杯挙げておくことを意識してください。
在職中に転職先を確保しておく
転職先を確保するタイミングは、よほどの事情がない限り「在職中」をおすすめします。
一度離職すると、転職希望者ではなく「失業者」という扱いになるからです。
失業者として求職活動を進める場合、「キャリアアップのために転職したい」といった志望動機はあまり説得力がありません。
応募自体も「働き口を探している」というスタンスで受け取られやすくなるため、立場が弱くなりやすいのです。
在職中に転職活動を進め、内定を獲得しておけば退職を申し出る際にも「転職が決まったので退職します」と伝えられます。
すでに決意が固まっていることは明らかなので、上司としても引き留めにくいでしょう。
このように、在職中に転職先を確保しておくことは、離職後に転職活動を進める場合と比べて有利な点が多いのです。
退職を引き止められそうな場合は退職代行サービスを利用する
職場によっては、人手不足などの事情から退職者を引き止めることも想定されます。
近年増えているのは、退職を引き止めるために昇給を打診する「カウンターオファー」です。
魅力的な条件を提示されると決心が揺らぎそうになるかもしれませんが、基本的には断る方向で進めましょう。
なぜなら、退職する理由は「給与条件への不満」ではなく、「勤務先の将来性への不安」だからです。
昇給するからといって安易にカウンターオファーを受け入れてしまうと、実際にはわずかな昇給だったということもあり得ます。
カウンターオファーは安易に受け入れないのが基本と捉えてください。
退職をしつこく引き止める恐れがあるようなら、退職代行サービスを活用するのも1つの方法です。
退職代行サービスでは退職時の手続きを代行してもらえるため、一般的に契約した翌日から出社不要となります。
上長が退職者と直接話したり、引き止めるための交渉に持ち込んだりすることは基本的にはできません。
転職先への入社も、先方が指定した日付で確実に入社できることになります。
強引な引き止めに遭う可能性があるようなら、退職代行サービスを活用することも視野に入れておきましょう。
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まとめ
勤務先の将来性に不安がよぎると、このまま勤務を続けて大丈夫なのか不安になるはずです。
まずは自社の状況を客観的な視点で観察し、事実関係を十分に確認しましょう。
先入観で「うちの会社はまずい状況にあるようだ」と決め込まないことが大切です。
一方、勤務先の将来性が危うい可能性が高いようなら、早めに決断して転職しておくのも有効なキャリア選択といえます。
今回解説したポイントを参考に、ぜひ今後のキャリアをじっくりと考えてみてください。