- ブラック企業に入社しないために求人の危険なポイントを見抜きたい
- ブラック企業の求人によくある特徴を知りたい
- ブラック企業に入社しないための注意点を把握しておきたい
上記のように考えたことはありませんか?
2020年6月に「労働施策総合推進法」「男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法」が施行されました。
これにより、職場におけるパワーハラスメント防止のための措置を講じることが事業主に義務づけられたのです。
しかし、実際にはブラック企業と呼ばれるような悪質な事業者が完全になくなったわけではありません。
今回は、ブラック企業の求人によくあるポイントと、入社前に見抜くためのコツを紹介します。
ブラック企業に入社しないための注意点もまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
ブラック企業の定義とは?
はじめに、ブラック企業の定義について整理しておきましょう。
実は、ブラック企業には決まった定義がありません。
厚生労働省のWebサイトでは、ブラック企業の一般的な特徴として次の3点を挙げています。
【ブラック企業の一般的な特徴】
- 労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す
- 賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い
- このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う
厚生労働省「労働条件に関する総合サイト『確かめよう労働条件』」より引用
それぞれの特徴について、どのような状況であればブラック企業に該当する可能性が高いのかを解説します。
特徴1:極端な長時間労働や高すぎるノルマ
常識の範囲を超える長時間労働や、明らかに無理があるノルマ・目標を課す会社はブラック企業の可能性が高いでしょう。
厚生労働省は、2〜6ヶ月間平均で月80時間を超える時間外労働や、これに近い時間外労働を「過労死ライン」としています。
過労死ラインを超えて勤務していた従業員が脳・心臓疾患に罹った場合、労災認定される可能性が高いのです。
つまり、毎月の残業時間が80時間を上回っているようなら「限りなく黒に近い」と考えられます。
ノルマに関しては明確な基準が設けられていないものの、客観的に見て明らかに達成不可能であれば無理難題の域に入るでしょう。
こうしたノルマを従業員に課しているようなら、少なくとも労働環境が良好ではないことは明らかです。
残業やノルマの実態は入社してみないと分からないケースも多いため、とくに注意しておく必要があります。
特徴2:賃金不払残業やパワーハラスメント
いわゆるサービス残業やパワハラが横行している職場も、ブラック企業の可能性が高いと考えられます。
残業手当は企業ごとに「当社は払う/払わない」と決定できるものではなく、労働基準法で定められている共通のルールです。
よって、残業した分の賃金が支払われていなければ、その時点で労働基準法に違反していることになります。
(ただし、みなし残業や固定残業制の場合は例外もあります。詳しくは次の記事を参考にしてください。)
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パワハラに関しては、冒頭で触れた通り防止策を講じるよう法律で会社に義務づけられています。
つまり、パワハラが横行しているような職場は法令遵守に対する意識が問われるのです。
厚生労働省では、パワハラを次の6類型に分類しています。
【パワハラの6類型】
精神的な攻撃:同僚の前で罵倒されるなど
身体的な攻撃:殴る、蹴るなど
過大な要求:新人に難度の高い仕事を押し付けるなど
過小な要求;経理担当者に事務所の掃除ばかり命じるなど
人間関係からの切り離し:職場で一斉に無視するなど
個の侵害:交際相手について執拗に聞く・家族を侮辱するなど
厚生労働省「NOパワハラ 事業主の皆さまへ」を参考に作成
こうした行為が日常的に繰り返し行われているようなら、その職場はブラック企業の可能性が濃厚です。
特徴3:労働者の過度な選別
労働者を必要以上に選別し、不要と判断した人材を辞めるように仕向けるような会社もブラック企業に含まれるでしょう。
たとえば人材を大量に採用しておき、求める成果を挙げた人以外は残れない仕組みになっている、といった職場が典型です。
そもそも採用した人材のうち一部しか雇い続ける意思がないので、離職率は毎年のように高くなります。
大量採用を続けていながら、社員数が一向に増えないような企業はこのケースに該当する可能性が高いでしょう。
企業側が求める水準に達しなかった社員は相当辛い思いをする確率が高いことから、入社を避けるべき企業といえます。
ブラック企業の求人によくある特徴7選
ブラック企業への入社を避けるには、求人票によく見られる特徴を押さえておくことが重要です。
次に挙げる7つの特徴のうち、いくつかに該当していないか求人票をじっくりとチェックしましょう。
提示されている給与例が不自然に高い
「入社1年目で年収1,200万円も可能」など、異様に高い給与例が提示されている求人は「怪しい」と思ってください。
過去にそういった事例が「なくはない」ものの、大半の社員は給与例に達していない可能性が高いからです。
不自然に高い給与例を求人に掲載する意図ははっきりしています。
「高給で釣って、応募者数を確保するため」です。
もし採用されたとしても、入社後まもなく周囲の社員から「普通は年収1,200万円も稼げない」と聞かされるでしょう。
給与例がそもそも理論上の数字に過ぎず、実際の平均年収はずっと低いことも考えられます。
不自然に高い給与例が求人に記載されていたら、何かがおかしいと思ったほうが無難でしょう。
求人が常に出ている
常に求人を出している会社もブラック企業の可能性があります。
社員の出入りが激しく退職者が絶えないことから、常時募集をかけていると推測できるからです。
応募の受付期間が他企業と比べて長い求人も注意したほうがよいでしょう。
実際には受付期間が過ぎるたびに新たな求人を出し、常に募集をかけていることもあります。
ただし、常に求人が出ているかどうかは、一定期間求人をチェックしていないと判断できません。
転職活動を本格的に始める前から求人のチェックを始め、常時求人を出している企業を見分けられるようにするとよいでしょう。
仕事内容が抽象的
「誰にでも簡単にできる仕事」「やりがいのある仕事」など、具体的な仕事内容を記載していない求人は要注意です。
仕事内容のミスマッチは早期離職の原因になりやすいポイントのため、本来ならできるだけ詳しく記載しておきたいはず。
あえて仕事内容を曖昧にしているということは、仕事内容を知ったら多くの人は応募を見合わせると予測しているのでしょう。
実際に入社すると、想像もしていなかった過酷な仕事を任される恐れがあります。
なお、雇用契約を結ぶ際に仕事内容を記載した「雇用契約書」や「労働条件通知書」を発行するのは企業の義務です。
入社前に仕事内容をきちんと説明しないのは違法ですので、その時点で法令を守っていない企業と判断できます。
仕事内容が具体的に書かれていない求人は、ブラック企業の可能性が高いと考えて警戒してください。
面接が1回のみ
面接が1回のみと記載されている求人にも注意が必要です。
入社後のミスマッチをできるだけ防ぐためにも、大半の企業は複数回にわたって面接を実施します。
たった1回の面接で採用を決定するということは、入社後に「選別」される確率が高いと考えるほうが自然でしょう。
また、「面接1回」と強調している求人は、転職先を早く確保したい求職者をターゲットにしていると考えられます。
今の職場を早く辞めたい・無職の状態を抜け出したいといった理由で、こうした企業を安易に選ぶのは避けたほうが無難です。
一般的に、人を簡単に採用する企業ほど人を簡単に切ります。
選考回数の少なさや選考期間の短さを強調している求人には注意してください。
社員数に対して募集人数が多い
現状の社員数に対して募集予定者数が異様に多いようなら、大量採用・大量離職を見越している可能性があります。
たとえば、社員数が20名の企業が30名の人材を一度に採用することは通常あり得ません。
入社後に人材育成を担当する社員が不足するのは目に見えていることから、そもそも人を育てる気がない企業だと分かるのです。
社員数は企業Webサイトの「会社概要」などで確認できます。
必ず確認して、募集予定人数と社員数のバランスを注意深くチェックしましょう。
精神論を思わせるフレーズが目立つ
「やる気」「熱意」「笑顔」など、精神論を思わせるフレーズが目立つ求人にも注意しましょう。
求人票には文字数の制約があるため、自社の特徴や強みをできるだけ詰め込みたいと考えるもの。
ところが、精神論を前面に押し出すということは「具体的に書ける特徴や強みがない」可能性があります。
また、求人票に精神論を記載するのであれば、まして社内では日常的に精神論が飛び交っているでしょう。
精神論だけで成功できるほど事業は甘くないので、企業としての将来性も含めて危惧すべきパターンの求人といえます。
内輪の独特な価値観が透けて見える
求人は社外の人に向けて発信する情報ですが、そこに内輪の独特な価値観を記載する企業にも注意しましょう。
典型的な例が「アットホームな社風」といったフレーズです。
職場がアットホームだと感じているのは社内の人々であって、赤の他人である転職希望者にとってほぼ意味のない情報といえます。
社内・社外の線引きができていない企業は、高確率で自分たちの価値観を中途採用者にも押し付けてくるでしょう。
結果として、独特な社風に合う一握りの人だけが残り、大多数の合わない人は辞めていきます。
ワンマン経営者の企業などによく見られる傾向のため、求人に「独特な内輪の価値観」が透けて見える場合は警戒してください。
ブラック企業に入社しないための注意点
ここまでに挙げたブラック企業の特徴は、あくまでも「求人から分かる」傾向です。
実際には、求人票だけでは判断できない面も多々あることは否めません。
そこで、ブラック企業に入社しないための注意点として次の3点を押さえておきましょう。
就職四季報をチェックしておく
求人情報に興味を持ったら、まず調べておきたいのが東洋経済新報社『就職四季報』です。
就職活動生に向けて作られている本ですが、入社3年後離職率や平均勤続年数、有休取得率など重要な情報がまとめられています。
転職希望者の方も見ておく価値は十分にありますので、応募を検討中の企業が載っていないか調べてみましょう。
就職四季報には大手企業が中心の「総合版」のほか、「優良・中堅企業版」「女子版」もあります。
応募を検討中の企業が掲載されていれば、企業研究に費やす時間を大幅に短縮できるはずです。
口コミサイトをチェックしておく
従業員や元従業員の方々が企業の評判を投稿している口コミサイトも、事前に必ずチェックしておきましょう。
求人票には、企業がアピールしたい情報が主に記載されています。
そのため、企業にとって不都合な情報はあえて伏せられていることもあり得るのです。
口コミサイトであれば、その企業で働いたことのある方々のリアルな声を知ることができます。
一例として、次のようなサイトで企業名を検索し、口コミが投稿されていないかチェックしてみましょう。
ネガティブな口コミが1件見つかっただけでブラック企業とは言い切れませんが、悪評が目立つようなら要注意です。
複数の口コミサイトに「残業が多すぎる」などの意見が投稿されているようなら、信憑性の高い情報と考えてよいでしょう。
面接時に社内の雰囲気をチェックする
求人に応募し選考を受けることになった場合、面接当日は社内の様子を注意深く観察してください。
面接会場に案内される間、オフィスの様子が見える場合があります。
社員の表情や働いている様子を観察し、不審な点がないか確認しておくことが大切です。
また、オフィスの様子にも目を配りましょう。
オフィスが片付いておらず雑然としていたり、明らかに掃除が行き届いていないようなら注意が必要です。
業務量が多すぎる・人間関係が極端に悪いなどの理由で、社員に気持ちの余裕がなくなっている可能性があります。
面接は「応募者が応募先企業を見極めるための場」でもあるので、じっくりと観察して職場環境を見極めましょう。
ブラック企業に入社してしまったら
もしブラック企業に入社してしまったら、どのように対処するべきでしょうか。
現在の勤務先がブラック企業の可能性がある人は、次のポイントを参考に今後のキャリアを再考しましょう。
本当にブラック企業かどうかをよく見極める
勤務先がブラック企業と決め込む前に、本当に「会社全体が」ブラック企業かどうかをよく見極めてください。
就業環境の悪化は、特定の上司や同僚など「人」に原因があることも考えられるからです。
もし特定の人物が就業環境を悪化させているようなら、異動願いを出すなどして改善できる可能性もあります。
直属の上司や同じ部署の同僚など、身近な人の存在は職場全体の問題のように考えがちです。
会社全体として問題があるのか、特定の原因を取り除けば解決可能な問題なのかを見極めましょう。
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転職活動を継続または再開する
もし会社全体がブラック企業の可能性が高いようなら、転職活動を継続または再開させましょう。
転職直後に職場がブラック企業だと気づいた場合、すぐに転職するべきか判断に迷うかもしれません。
しかし、法令違反など明らかなブラック企業要素が折り重なっているようなら、勤続期間が長くなるほど傷も深くなってしまいます。
できるだけ早く就業環境を改善するためにも、転職活動に取り組むのが得策でしょう。
法令遵守意識の低い職場なら退職代行サービスの利用を検討する
転職先が決まったら、現在の勤務先に退職の申し出をすることになります。
しかし、そもそも法令遵守に対する意識の低い職場であれば、無理な引き止めに遭う可能性も否定できません。
退職時にトラブルが発生すると、次の職場への入社日が遅れてしまうなどさまざまな悪影響が及ぶことが予想されます。
もし勤務先が信用できない・トラブルになる可能性があると判断した場合は、退職代行サービスを活用しましょう。
退職代行サービスとの契約が成立すると、基本的には翌日から出社する必要がなくなります。
退職手続きに必要なやり取りを代行してもらえますので、無用なストレスを感じることなく退職できるでしょう。
ただし、退職代行業者選びには十分注意してください。
どのような退職代行事業者を選べばトラブルを回避できるのか、次の記事にまとめておきました。
こちらもぜひ参考にしてください。
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まとめ
ブラック企業に特定の定義はありませんが、ブラック企業によくある特徴は厚生労働省も例示しています。
求人情報からブラック企業を見抜く「目」を養うと同時に、事前の情報収集をしっかりと行いましょう。
もしブラック企業に入社してしまったら、できるだけ早く環境を変えることに集中するのが得策です。
今回紹介してきたポイントを参考に、ブラック企業を避ける・脱出する方法を押さえて行動に移していきましょう。